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晶とはバスケ部で、ともに一年生でレギュラーの座を勝ち取ったライバル同士だった。いや、勇斗が一方的にライバル視していただけかもしれない。晶は構えていた勇斗に最初から普通に話しかけてきた。
晶は小学校の頃は地元チームに入っていたが、中学時代は母親の看病などでバスケから遠ざかっていたそうだ。にもかかわらず、彼の動きはブランクをものともしないほど、素早く、冷静だった。背の高さに頼りがちで、すぐ熱くなってしまう勇斗とは正反対だ。
くわえて人の心を掴むのが不思議と上手い。
一年生の頃は晶目当ての女子が普段の練習にも押しかけ、先輩に睨まれかけたが、晶は「騒ぐなら出て行って欲しい」と彼女たちを追い出した。練習態度も真面目なため、いつしか先輩にもかわいがられるようになった。
勝てないなと勇斗は思う。
晶は完璧だった。背は勇斗より低いが、手足は長く、細身なのに適度に筋肉のついた身体はしなやかだ。サラサラの黒髪にニキビひとつない肌。TVで見るタレントみたいだった。成績も秀人ほどではないが、上の方である。秀人によれば「あいつは要領がいい。むだな勉強はかなり手を抜いてる」らしいが。
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