鍵のかかる部屋

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 けれども紗希は勇斗から言われたわけではないが、彼がずっと恵美里を好きなのを知っていた。一年生の頃からマネージャーとしても、友人としても彼を見てきたからわかる。しかし秀人も同じクラスになってすぐに気づいたらしいので、勇斗はわかりやすいのかもしれない。  秀人のことは二年生で学校祭の準備を先導している姿を見て、好感を持った。クラスメートのことをよく見ていて、各々性格に合った役割を割り振っていた。  恵美里と秀人が一緒に学級委員をしていた関係から、紗希も彼と話すようになった。三人で話していると自然と勇斗も混ざってくる。晶は紗希の知らないうちに秀人と普通に話していた。秀人に聞くと、きっかけは覚えていないという。まあ紗希自身も恵美里と仲良くなったきっかけなんて思い出せないから、そういうものなのだろう。  五人だけではなかなかまとまらない話も、秀人が具体的にしてくれる。いつしか彼は自分たちの中でそんなポジションになった。  数分前、秀人から届いたメールに紗希は身構えずにはいられなかった。 ――確認したいことって、何だろう?  紗希は人の色恋沙汰には敏感で、時に仲を取り持つこともあったが、自身はいまいち恋愛感情というものがよくわからなかった。ただ、三年生になり秀人とクラスが別れてから、逆に彼の存在に敏感になっていた。廊下の向こうから大勢人が歩いてくる中で、秀人のことはすぐに気づく。話をするとつい、紗希は憎まれ口を叩いてしまうのだが。     
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