別荘

1/8
224人が本棚に入れています
本棚に追加
/228ページ

別荘

「外見はボロいけど、中の水周りは直したんだ。それでも、もう十年は経つけどね」  晶は謙遜なのか「ボロ」と言ったが、なかなかどうして、ほぼ「お屋敷」じゃないかと勇斗は別荘を見上げた。  木造二階建て。たしかに外壁の白い板塀や青緑色の窓枠はところどころ塗装が剥げている。だが、造りは立派で、部屋数はかなりありそうだ。圧倒されるような大きさの洋館だった。似たような建物を横浜の異人館で見たことがある。  買い物を終えて、タクシーで別荘についた頃には日は暮れかけていた。時刻も午後五時をすぎている。  新幹線を降りてから、駅に近接したスーパーで、彼らは三日分の食料を買い揃えた。その際、晶が全ての代金をクレジットカードで支払った。当然、他の五人はあわてたが、晶は叔父から借りたカードで、三日間必要なものに使っていいと言われたらしい。だから食べたい物を買ってもいいと晶は言ったが、勇斗たちは遠慮して、前々から考えていたカレーなど簡素なもので変更しなかった。  晶は母方の叔母夫婦の家で妹と暮らしている。母親は中学の頃亡くなり、父親とは離れて暮らしていると以前、勇斗は本人から聞いた。     
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!