【第1話】

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「呪いは言い過ぎだとは思うけど、まぁ非科学的で根拠がないものだっていうのは間違いないよね」 伊織が答えた。 科学で解明できないようなものは、この現代においては無い。 それが彼の持論だった。 同じように、オバケや心霊写真の類も信じていなかった。 その考え方は、彼の父親や、そしてその職業から受け継がれたものかもしれない。 「あの子に聞かせてあげたいわ。根拠の無いことやって人を惑わせて。 迷惑だし時間の無駄よってね」 「別にそれはいいんじゃない?根拠が無くとも、楽しんでるのを無駄だというのはどうかとは思うけどなぁ?」 フッと笑いながら伊織は言った。 あやめは驚いたような顔をしたかと思うと、次の瞬間ムスッと拗ねてしまった。 「東郷くんてさぁ、なんであんなに何でも揃ってるんだろうね」 「え?」 真由が伊織の方を見つめながら呟くように言った。 さやかは、その言葉にきょとんとしている。 「だって、あんなにイケメンで背も高いし。なのにさぁ、お家は超~お金持ちでしょ?どうなってんの!?」 「う、うん。確かに」 いつしか鼻息荒く話し始めた真由に少々圧倒されながらも、さやかは否定しなかった。 伊織の父親は有名な製薬会社の社長であり、伊織は当然のことながら次期社長だと期待されている。 幼い頃からずっと両親から言われ続けてきたし、伊織自身もそうなる運命にあるのだと信じていた。 だが、心のどこかではそんな人生はつまらないと感じてもいるのだった。 「ねぇ、何なの?さっきからあの子の方ばかり見てるけど」 あやめが不機嫌そうに言った。 ボーっとしていた伊織はハッと我に返り、あやめの方を見た。 別にさやかのことを見つめていたわけではない。 これから先に展開されるであろう、つまらない自分の人生のことを考えていたのだ。 だが、そんな言い訳をする必要性も無いため、「そうだっけ?」とだけ言っていたずらっぽく笑い、椅子に座り直した。
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