にげられないゆめ

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にげられないゆめ

「なんでだよ。誰も殺されることはしていないし僕自身も行った覚えはない。一体誰にこんな酷い目をしたんだい?」  真面目な表情をして問いただすと狂気に満ちた顔で笑い声をあげた。一仕切り笑いが落ち着くと小夜子は 「私に殺人ができると思ってるの?まあ秋春くんが指とか腕とか欲しいとか言ってないけど私なりの愛の形を証明したものだからちゃんと受け取って欲しいな。さっきの質問は指?腕?まあ指は母親で腕は父親だよ。」  二人共煩いし、私が秋春くんと付き合おうとするの邪魔しようとしてたしとのことだ。吐き気と嫌気が同時に襲ってきた。気持ち悪いほどの僕への執着、それほど思っていながら僕が嫌だとはわからないのかなどグルグル頭の中でさまざまな思いが出てきては萎んで、萎んでは膨らんでいく。頭が痛い目の前がよく見えなくなった。この状況で一つだけわかったことがある。僕は生きてはいけなかったんだ。生きている限り誰かが僕のためだと言って殺そうとする。なら僕を殺してくれよ。 「小夜子僕は貴方のため、貴方のためって言って自分の考えを押し付けくる人がこの世で一番嫌いだよ。君たちは所詮用意した物を肯定して欲しいだけだろ?私のやったことは悪くないって。」 自分でもわかるくらい幼馴染相手に冷めている。さようならと言って教室を出ようとすると小夜子は泣きそうな顔で 「私のやったことは押し付けだったの?……違う違う。だって私たちは結ばれる運命にあるんだよ。こんなに仲がいいんだよ。当たり前なんだよ……」 ブツブツ独り言を零していた。それを眺める僕の目はどれほど冷めているのか検討もつかない。
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