観察日記~無垢な心を添えて~

治る？直る？なおる？

「私が知っているのはこれくらいしかわかりません。あの子がまだ無邪気にしていた頃はもう訪れないのですから。私達の教育が悪かったのかしら？そんなに寂しかったら言ってくれればいいのに。私にはあの子が飛び降りた事を学校や病院で知らされたので。」
　そう警察に言うと顔を合わせて頷いたりしている。今私は自殺した息子の取り調べを受けている。もしかしたら家で、学校で、友人関係で何かあったのではないかという事で私や夫は事情を聞かれていたのです。息子が自殺してからたった3日でニュースにも取り上げられています。
　今日はそうそうに終わったのであの子の所に寄りましょう。フルーツを八百屋さんで買って病院に入ります。
「すいません。恐れながら面会をするにはお名前と部屋番号を名乗っていただかないと……」
　どうやら何か揉め事があった見たいね。おじいさんとナースさんが言い合いをしている。
　受付にいたナースさんに自分の名前と部屋番号、息子の面会に来た事を伝えるとすぐに通してくれた。エレベータで三階に移動するとそのまま真っ直ぐに進む。ここ一週間の日課だ。事情聴取が終わって時間があったら病院に寄って調子を見る。手土産も忘れずに。扉を引くととても小さな個室に男の子が寝っ転がっていた。私の息子秋春だ。
　頭から落ちたため脊髄を折ってしまい下半身不随のため動かなくなってしまった。何かトラウマでもあったのか血液や赤い物、箱や人の手などを見るとパニック障害に陥ってしまう。ひどい場合は手当たり次第物を投げてしまうため出入りしているナースさんはなるべく人数を減らして貰っている。
　さらにパニック障害だけではなく人間不信にもなってしまったとの事を聞いたとき信じられなかった。あの子は人を信じられず、人と関われず、一生を車椅子で過ごさなければいけない事を知ったのだ。彼は一体どんなに絶望しているかと慰めに行った時何をしていたかわかる？小説を無邪気に書いていたのよ。今まで隠れて書いていて今日まで未練となっていた小説家を目指していた。
　窓辺に石を置いて目をキラキラさせて見ていた。川辺で見つけた石を時々お土産として持っていくとすごく値切って安く手に入れようとする。そんなあの子でも私の息子よ。