ひたひたひたひた

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

ひたひたひたひた

 プラネタリウムは中学以来行っていなかったのでとても久しぶりだった。人はたくさんいるのに真っ暗になった瞬間そんな事どうでも良くなった。  夕方から沈んでいく太陽、そして昇って来る月を無数の星たちが歓迎しているようだ。あれは何とか星座こっちは何とか星座と係の人が赤いレーザーポインターで指してる方を見ているのはとても首が痛いがそれが気にならないくらい輝いていた。  あっという間に公演が終わると心の中にはまだあの時の興奮が冷めないで残っていた。病室に帰ってくると二人がとても心配した顔で僕らを見ていたがどうやら二回目は一回目の事もあってかそこまで進歩しないだろうと思ったのに割と時間がかかった事に心配しているのだろう。今日のプラネタリウムでの出来事を話すと少しずつ顔が綻んでいって泣き笑いの様な感じで最後まで聞いてくれた。  それ以降調子のいい日はプラネタリウムや本屋に連れて行ってくれて先生は僕にいろいろな物を与えてくれた。それは僕が病室でダラダラするためじゃなく社会に戻れるようなためになるものだった。厳しさは無かったが簡単に引いてしまうため本当にやりたいことなら主張しろとの事を学んだ。  新しい看護師さんにお世話を頼んだり、ナースコールで呼び出したりもした。初対面の人にも慣れてきたが一対一ではなく二対一なら誰でも平気になった。  ここまで改善して大丈夫かと思ったが赤い物や手術シーン、殺害シーンなどは生理的に受けつけなくなっている。前までなら少し目を反らせば見えたのに今では一度見ると吐き気がして夢にも出てきそうなくらい怖い。  小夜子の母親と父親の事をまだ引きずっているのだ。警察には母経由で話してこの間仮釈放してもらったらしい。まあ引っ越ししたらしいしそうそう外では合わないだろう。小夜子の親御さんたちは義肢を着けて不便ながらも生活しているとの事だ。  何度目かのプラネタリウムを生きながらそう感じるのであった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!