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金蘭豪華な春姫達をぼんやりと眺めながら茶筅は自分の身なりを見下ろした。
纏うのは小袖と打ち掛けのみという簡素な佇まい。
帯も皆がしているような幅広のものではなく、半幅帯を巻いて簡単に結んであるだけ。
髪も、長い琥珀の髪を緩く結んで櫛と簪を指してあるだけで、他の春姫たちのように豪華に飾ることはない。
ただ、その衣や櫛や簪は誰のものよりも高価で、質も品も良い。
そんな身なりをしていても、客達は茶筅に視線を向けては、だらしなく表情を緩めて、そして他の春姫を買っていく。
それで良い。
前までは、買われる側にいた自分だが、今では選べる側に代わった。
自分は餌で、客を呼び寄せるための華であれば良いのだから。
「茶筅さんも華姫になっちまったんだなぁ…」
何処かからか聞こえてくるその声に、視線をチラリと向ける。
自分を見て話している客達が見えて、視線が合って、茶筅はやんわりと笑みを浮かべた。
それに頬を赤らめて、表情を緩める客に小さく会釈をする。
昔の馴染み客だったその人達は、今の茶筅を買うには無理がありすぎて、こうして冷やかしに来ては格子ごしの逢瀬を重ねていた。
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