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ポケットから佳子の家の鍵を出すと、彼に渡した。まるで……バトン……みたいだな。
俺から、彼へ。きっと、彼がアンカーだ。
「彼女に返して下さい。……あなたが持っている方がいい」真っ直ぐに彼を見た。
「……余計なお世話、でしたね」
彼も俺を真っ直ぐに見ていた。ちょっと、こっちが照れるくらいの……いい男だな。
彼が受けとると背を向けた。俺の次が、あんなイケメンかよ。
なんだよ。俺なんて全く残らないじゃねぇの。佳子の記憶に。
嫌な男になろうと、散々悩んでわざわざランチタイムを選んで別れ話したんだよ!
やっと落ち着いた頃に、ぱんつで呼び出しやがって!後、濁しやがって!
散々かき回して、自分はあんなイケメンと付き合うのかよ。
あー……くっそーーーー。
……まあ、振ったの俺だし。ついて来てって言えなかった俺が一番、根性なしだよね。
後、最後までいい人ぶったところも。
……幸せになれ、佳子。大丈夫だ。
佳子の記憶には残んなくても……俺の記憶には……残る。
別れてからぱんつ持ってこいって言った女。
……幸せになれ、佳子。
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