3440人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういや、会社の人すごいイケメン揃いだって言ってたもんなー」
そのうちの、一人……ってことだよな。
「よく、浮気しなかったね」
「いや、だって……」
「ぞっこんだった? 俺に? 」
「いや、相手にされてなかった……」
……こいつ……
だけど、こんなところも好きだった。自然体で。
「おい、そこは……“そうだよ”って言ってもよくない? 」
「あー、ごめん」
そこ、謝られる方が傷つくわ。
「いや、会社ね、あの人レベルが数人。その他もなかなかのイケメン揃いで。あ、もちろん女性もすんごい」
……マジか。俺……初めて見たってくらいのイケメンだったぞ。
「え? マジで! あのレベルの女の人いんの? 」
「食い付きますね~」
「うん、まあ、見たいだけ」
「私もそうだよ。見たい……だけだった」
『だった』?
「うん……それが……触りたくなっちゃった? 」
「……へ? 」
現実じゃなかったのが、手が届いちゃったって……ことか……。でも、お似合いだよ、案外。佳子だって可愛い。
「さて……俺仕事残してるし……そろそろ行くわ」
「あ、うん。ありがとう」
その時、ノックの音が聞こえた。そして……そのイケメンが部屋に入ってきた。
うわ、やっぱめちゃめちゃ綺麗な顔だな。彼は俺と佳子を交互に見た。
「あ、もう帰りますので……どうぞ」
俺の言葉に反応もせず……顔面蒼白。怖いくらいに綺麗だ。
……まるで……人形みたいだな。
「洗濯物、本当にいいの? 」
少しくらい……落ち込みの、お裾分け。わざと、親密な関係を匂わす為に言った。
「いい、いい、ごめんね。ありがとう」
佳子がそう言うと
「了解。じゃあ……明日は……こない。……かな」
明日も……明後日も……もう……こない。
来ることは……ない。
じゃあね、佳子。この男の前では言ってやんないけど。
未だに動かない男に一礼すると部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!