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荷物に、佳子が食べたいと言ったプリンも買って病室へ戻った。
「はい。まだ、何かあるかもしれないから……鍵、俺持っとくよ?」
それに何の躊躇いもなく、頷いた。
「あ、うん。もう……ないと思うけど……。あ、ありがとう。助かりました。とりあえず充電器、充電器! 」
「……少し……痩せた? 」
「え、あ……うん。ほんの……少し……」
「それって……俺の……」
違うよな、自惚れだ。
「俺の……せいじゃ、ない……よね? 」
分かってて聞いた。これくらいの意地悪はいいだろう。
「え……あ……」
俯く佳子。
「なーんも。なー……んも、なかった」
「え? 」
「俺の物」
少し、佳子の顔を伺う様に見た。
「まぁ、捨てろって言ったけどね」
そう言って、笑った。全く、分かりやすい。
「……ご、ごめん」
「いや、いいよ。別れるってそういう事だもんな……。あの部屋にも……もう入るとは思ってなかったし。気を使わなくて……
って、気を使ってたら、こんなとこに呼び出されてないわな。俺」
「そ、その通りでございます」
「何で? 」
「何が? 」
「そっちの人に、頼まないの? 」
「どっちの人? 」
「……。いるよね? 誰か」
「頼めるような人は……いないよ」
「……ふーん……そっか」
いない?じゃあ……あれは……。
「佳子からの、番号だと……俺が出ないだろうって思ってるから、公衆電話から掛けて来たのかと思った」
「……何で? 出てくれるでしょ。そんなタイプでもないし」
……やっぱり……何も考えないな、コイツ。
「……ついて、くるか? 」
本当に、そんな男が、いないなら。
「……え? 」
「まあ、ナイよな。それは」
あっちに行ったらもうこんな風に駆けつけてやれない。本当に……連れて行こうか。
「……仕事、どうすんの? 」
「二週間は……行けないよね。
退院しても、通勤を考えると……」
「辞める? 」
「それは、無理だわ。めちゃめちゃ迷惑掛けてるし……あ、土日だけど…週明けから迷惑かける。めちゃめちゃね。だから、さすがにこのまま……は……」
「……そっか……そうだわなぁ」
佳子は、そうだわなぁ。ちゃんと、自分の仕事に責任を持ってる。……辞める、なんて……言わないか。何を期待したんだろう。
「あ、そうだ。館内案内見た? 」
「ん? あぁ……見てない」
「売店あった。ちなみに、充電器とか、下着、日用品も売ってた。カフェもあったよ」
気づかなかったから、俺に電話してきただけ……だ。
「うん、まぁ……おばちゃんパンツかもね」
俺に電話してくるより、そっちのがマシだと思うけどね。
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