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「コーヒー買ってこようか?……これ、あるし」
買ってきたプリンを見せるように持ち上げ、そう言った。佳子の目がパッと輝いた。
買ってきたコーヒーを渡すと、プリンを食べ始めた。
「……はっ、幸せそうな顔」
ほんっと、何も考えてないんだろう。だけど……この顔に……こっちまで癒される。
「え、あ……うん。日常が幸せだって噛み締めてる」
「まだ、日常戻れてないからね」
入院だろ、お前。
「一口、食べる? 」
と、自分のスプーンを差し出す。
「……。いらない」
欲しくて見てたんじゃねえ、ての。
「や・め・よ・う・ね? そういうの」
段々、腹立ってきた。普通すぎないか?コイツ。
それとも……まだ……幸せそうにプリン食べてた佳子が申し訳なさそうにうつむいた。
今更かよ!
「この件に関しては……仕方ないからね」
何も考えてない。そのくせ、すぐに気にする。仕方ない。
「そこは、気にするな……と言いたいけど、まぁ、気にしろ。そして、反省しろ。……会社の番号と、主要な人の番号くらい控えとけよ。……番号覚えてたの俺だけかよ」
「……実家と? 」
「いや、実家とか……当たり前すぎるだろ」
俺だけ……か。
「退院まで」
「ん?」
「退院するまでは、頼れ。ま、忙しいから平日はちょこっとしか……」
「いや! もう、うん。十分。十分です。大ちゃん、本当にありがとう。冗談抜きで…感謝してます。……だから……」
「退院まで」
自分にもそう言い聞かせた。何も考えずに過ごそう。それから、考えよう。
俺達の事も……。佳子の仕事の事も……。
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