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早朝よりハードすぎる接客をなんとかこなし、気付けば終業時間となっていた。
外へ出ると時刻は、午後10時を回っていた。
いつもの愛車に跨り、片道1時間以上は優にかかる都内の外れにある家へと夜道を急いだ。
夜ということもあり、いつもは迂回するカフェの近所にある大きな総合運動公園を、自転車で突っ切ることにした。
辺りは、数名のランナー以外見当たらない。
自分の瞬時の選択が、間違っていなかったことに小さくガッツポーズをした。
よしっ!これは、すぐに抜けられるぞ!!
そう、張り切った俺は更に自転車のスピードを上げ、真夏の夜の生温い風を全身で切る。
大きな時計台がある広場を抜け、芝生のあるグランドの脇をサイクリングロードで通り抜けると、そこは公園の出口となっている。
やがて、最終カーブに差し掛かったところで、暗闇の中、少し先に人が倒れていることに気が付く。
「うわ!何だよ!!!」
慌ててブレーキを停め、駆け寄る。
そこには、黒い中折れ帽子を被った長身の男がうつ伏せになって倒れていた。
「大丈夫ですか?!!」
俺は、軽く肩を叩いて声を掛ける。
「……」
反応は、無いようだ。
もう一度、今度は強めに肩を叩く。
「んっ……!」
男は、なんとか声を上げた。
「何とか、生きてる!」
安堵した俺は、とりあえず救急車を呼ぼうと自身の携帯電話を黒のショルダーバッグから取り出す。
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