962人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
すると、目の前で倒れていたはずの男の手が伸びてきて、電話を掛けようとする手を阻止した。
「ちょっと!何するんですか!!」
「救急車なら……呼ばなくていい」
なんとか身体を捻って上半身を起こした男は、顔全体が殴られ、傷だらけで大きく腫れ上がっており、最早、元の顔が判別できない程だった。
「でも!!かなり血が出てますよ!!これ使って!」
デニムパンツのポケットに入れていた、青色のタオルハンカチを目の前の男へと手渡す。
すると、男は驚いた顔で俺を見つめた。
「あ!やっぱりちょっと待ってて下さい!!このタオル濡らしてきます!」
「待てよ!」
そう言い身体を起こそうとしたが、肋骨でも折れているのだろうか、その周囲を手で押さえ苦痛に顔を歪めると、その場へと崩れ落ちた。
「大丈夫ですか?!」
「……っ!」
とりあえず男の安全確保するために、サイクリングロードの脇に規則正しく生えている木の下へと引きずりながら移動させる。
コンクリートの地面の上を引きずっている時点で、二次被害も予想されたが、自転車等に轢かれたらそれこそ大事である。
最初のコメントを投稿しよう!