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再び、現在――。
「……まさかその後、水まで被って俺を庇ってくれるとは思わなかったがな。でも、その優しさが本当に颯斗らしくて、その一瞬でもっと好きになったんだ」
蕩けた表情で、やっと見つけた男を見つめる。
「だって、店長からの『お客様は神様です』っていう教えを守らなきゃいけないと思ったんですよ」
照れ隠しに俯きながら話す颯斗が、余計愛しく見えた。
「どうだ?……謎は、解けたか?……これが、『高遠颯斗』に俺が執着する理由だ」
「……でも、そもそも何であんなところで倒れていたんですか?」
颯斗からの素朴な疑問をぶつけられ、俺の表情は固まってしまう。
「そりゃ、それは……」
言いかけたところで、不自然に視線を天へと仰ぎ、罰が悪そうに口籠もる。
「それは?」
珍しく、颯斗の方が強引に俺の前まで歩み寄ってくる。
「ん……そんなこと、どうでも良くねぇか?」
「誤魔化されませんよ!普通の人は、あんな大怪我を負ってあんなところで倒れてませんから!!俺、あの日帰るのが午前様になって親にめちゃくちゃ怒られたんですから!!」
1歩も譲らない鬼気迫る様子に、俺は思わずサングラスを外し、観念した様子を見せる。
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