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「そう言えば、3ヵ月ぶりに常連の龍ヶ崎様が日本へ帰国したね」
本日のメニュー表の準備をしていた店長が、何気なく例の男の話題を振る。
「あ……そうですね」
翔琉と最後に会った日のやりとりを思い出すと心中穏やかでないが、店長の前ではなるべく平静を装う。
「また、明日からカフェに来てくれるかな?」
「どう、ですかね……?」
愛想笑いをしながら、その場を乗り切る。
3ヵ月前。
龍ヶ崎がハリウッドへと旅立つ前、俺は龍ヶ崎からキスをされた。
何故、こんなことを俺にするのか、帰ってきたら理由を教えてやる……そう言って去って行った。
龍ヶ崎は、俺に1度は連絡先を手渡したが、こちらからは結局連絡先を教えていない。
当然、向こうから連絡が来ることは無く、この3ヵ月音信不通のままだ。
ハリウッド級のスターが、一般人で何も取り柄のない俺に「待っていてほしい」と、今でも本気で言ったとは思えない。
俺自身もこの3ヵ月、受験勉強の最後の追い込みで他を気にする余裕がなかったため、もはやあの男があの日俺に言った言葉も定かであったか、確信が持てなくなってきていた。
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