小さなアニバーサリー

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「おめでとう」 唐突に龍ヶ崎はそう言うと、丁寧にラッピングされた1輪の真っ赤な薔薇を俺の目の前へと差し出す。 本当に、バイト上がりを狙って職員出入口の前で待っていたようだ。 「は……?」 何に対して、「おめでとう」なのかよく分からない俺は、戸惑いを感じる。 「……誕生日だろ。2月14日……」 「あ!」 忙しい毎日に、ふと今日が自分の誕生日であったことを思い出す。 「何で、知って?」 俺の携帯電話の番号すら知らない男が、個人情報を知っているのか驚きを隠せなかった。 「店長から聞いたんだよ。帰国直前、店に電話してお前が14日出勤か聞いたんだ。そしたら、その日が誕生日だって教えてくれて……」 先程の店長の意味深な問い掛けを思い出し、俺はこういうことだったのか、と呆れながらも納得する。 相変わらず、プライバシーも何もない職場だ。 ややムスッとした俺に、龍ヶ崎は無視して続ける。 「この3ヵ月、本当にお前が待ってくれているという自信がなかったから……不安だった」 なかなか薔薇を受け取ろうとしない俺に、ふと本音を呟く。
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