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「離れている間、連絡できないって……かなり不安になるものなんだな。初めて知ったよ」
サングラスを掛けたままでも、不安の色が伺い知れる龍ヶ崎に、俺は戸惑いを感じる。
「……だから、俺……前も言ったかもしれませんが分からないんです。龍ヶ崎様の、その俺への執着が。そろそろ約束通り、教えて頂けませんか?」
高校の制服であるブレザー姿の俺は、淡い黄色のネクタイの下方をキュッと右手で握る。
すると、龍ヶ崎は羽織っていた高級ブランドの黒いダウンジャケットの左ポケットから煙草のパッケージを取り出し、1本口に咥え、器用に片手で火を付ける。
その紫煙を大きく吸って口から吐き出した後、重い口を開ける。
「去年の夏、俺たちは出会ってるんだ」
突然の思ってもいなかった告白に、驚きを隠せなかった。
「去年の夏……?」
やっぱり、俺たちの出会いが“偶然”なんかじゃなかったことを知る。
「執着している理由、教えてやるよ……。だが、まずは颯斗から思い出してみろよ」
その言葉に、まずは俺自身の記憶の糸を辿ることにしたのであった。
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