◇Ep:01 押しかける

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◇Ep:01 押しかける

A few hours ago...  夏が終わる。何となく気分が沈む季節だ。冷たく感じる昼の風が喪失感を運んでくる。白飛びするビーチハウスに人影はなかった。陽射しが強い。(あお)ぐ美空は高く水色だった。  灰谷秀(はいたに しゅう)はヘッドフォンを外して首にかけ、切ないような郷愁(きょうしゅう)の海風の音を聞きながら、スケートボードに乗ってストリートを滑走(かっそう)し、ただ、ぼんやりと物想いに(ふけ)っていた。  「出ないや。まあ、いっか。行っちゃえ」  電話しても全然(つな)がらない。不安が(おそ)う。友達以上恋人未満の滝沢悠(たきざわ ゆう)と約束があって、自宅マンションの前まで足を向けたけれど。 「まさか、忘れられた? ショック……」  遊び回ったツケが回って音信不通気味だ。この夏、期待したことは何も起きなかった。お互いのスケジュールが全く合わないから、働いている悠と頻繁(ひんぱん)に会うこともできない。 「そっちから誘ったのに、嘘だろう? 問題集の答え、教えてくれるって言ったじゃん」     
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