◇Ep:02 美しい生脚

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◇Ep:02 美しい生脚

美脚(びきゃく)だね? 生脚、ご馳走さまです!」  ベンジャミンの葉が涼しげな植木鉢の影で、ライトグレーの木目の床に寝そべって、風呂上がりで薄着の姿の(ゆう)をからかったら、驚いた様子で、びくんと肩が跳ね上がった。彼に気が付くと、一瞥(いちべつ)をくれて無視をする。 「足が長いよ。ねえ、股下、何センチ?」  着替えている悠は(にわ)かに無言で怒り出す。半裸のまま彼の身体を平気で軽く蹴り上げ、ジーンズ姿のまま、さっとシャツを羽織る。 「驚かすなよ。来るんなら連絡を入れろ」  やはり多忙な悠は約束を忘れていたようで、彼の突然の訪問に当惑(とうわく)している感じだ。ただ、何が起きても(あま)り動じない人である。 「俺は電話した。約束してたでしょう?」  彼が怒って色々後からぐちぐち言っても、顔色一つ変えない。話を聞くだけは聞くが、自分が悪いと思ってはいない。淡白(たんぱく)である。独りで怒っているのが、馬鹿らしくなった。携帯電話を確認して素直に謝ってくるから。 「今、見たよ。すまない。まあ、座れよ」  冷然とした気品ある姿でコーヒーを飲み、具沢山の美味そうなサンドウィッチを食べ、銀縁眼鏡を掛けて、英字新聞を読み始める。  何ということはない生活感のある姿なのに、洗練された仕草をするから目の保養だ。  ビジネス雑誌の表紙から出てきたみたいに、インテリジェンスなクールガイなのだった。 「着替えないの?」  自由業なのに、ビジネスライクなセンスの悠は、休日でもきちんとスーツを着ている。いつでもとにかくキチキチッとした正装だ。  ラフなスタイルは珍しくて、少し観察した。 「着替えたいよね?」  悠は目線だけくれて余り話してくれない。 ふと散らかったテーブルの上を片付け始め、見もしないのに無駄に大画面のTVをつけ、無声で天気予報だけを確認すると、消した。 「俺がいるから?」  高貴な生まれの人は肌を見せない代わりに、常に大勢の人の視線に(さら)されるからか、堂々としていて裸を見られても平気だとか、古典文学を読み(あさ)ればそんな表現もあるが、悠は正にそんな感じで悠然(ゆうぜん)としているのだ。ただ、どんな姿でも常に緊張している印象。
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