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「そこまで言うのならいいだろう。しかし、明日の会議で賛同を得られなかった場合は、辞職も厭わないんだろうな?」
「はい。元より覚悟の上です!」
係長と妹尾を守るためには致し方ない。自分が火ぶたを切ったのだ。死ぬ気でやるしかない。
「そうか」
専務がわかったとうなずく。怒りはいくぶん収まったものの、その目から憎しみは消えていない。
「明日を楽しみにしている」
そう吐き捨てて、専務は大股に部屋を出ていった。
「専務! お待ちください!」
酒井部長が慌てて専務を追いかけて部屋を出ていった。
しんと静まり返った途端、俺はその場にすとんっとへたり込んだ。腰が抜けた。ほっと息を抜いたら、緊張が解けて足に力が入らなくなってしまった。
「大丈夫ですか、課長!」
妹尾が膝を折って、俺を見る。コリコリと頭を掻き「まいったな」とつぶやいた。
専務に喧嘩を売ってしまった。専務だけじゃない。酒井部長を除く管理職全員を敵に回すことになってしまった。しかも自分の進退まで賭けて。
「課長、かっこよかったです」
目をうるうるさせて妹尾が俺を褒めた。係長も妹尾と同じく目を潤ませて俺を見つめている。そんな係長に手を伸ばす。俺の指先を係長のざらざらとした紙やすりみたいな舌が優しく舐めた。
「なあ、妹尾」
「はい、課長」
「係長は会社に必要かな?」
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