第三話 課長と係長

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「課長?」  俺の異変に妹尾が身を屈めて顔を覗きこんでくる。しかも超至近距離で。  ――はっきりした二重だなあ。近くで見るとまつ毛もすごい長いな。  途端に心臓が2度跳ねた。体温までもが急上昇。 「な、な、なんでもない! それより子猫をそこに入れてやれ!」 「そうですよね」  俺の手から大事に猫を受け取る妹尾の指先の感触に、ビビっと体に電流が走る。  ――どうした、小宮山誠一郎! しっかりしろ!  「あの、課長」  ふうふうと呼吸を整える俺を気遣うように妹尾が声を掛けてきた。 「な、なんだ」 「名前、どうします?」 「な、名前?」 「ええ。ないと不便ですよね?」  胸に白色のもふもふを抱きながら妹尾が問う。たしかに彼の言うとおり、名前は必要だろう。だが、突然言われても、パッと浮かぶわけがない。  ホワイトチョコレートのような白い毛。アクアブルーのつぶらな目。クリーム色の三角耳。ちょっと短めの鍵しっぽ。愛らしい口。立派なひげ。 「えっと……そうだな」  どうせなら、かわいい名前がいいだろう、と顎に手を添えて思案する。 「係長で」 「は?」 「課長の下だから、係長はどうですか?」 「なんのジョークだ?」     
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