92人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「課長?」
俺の異変に妹尾が身を屈めて顔を覗きこんでくる。しかも超至近距離で。
――はっきりした二重だなあ。近くで見るとまつ毛もすごい長いな。
途端に心臓が2度跳ねた。体温までもが急上昇。
「な、な、なんでもない! それより子猫をそこに入れてやれ!」
「そうですよね」
俺の手から大事に猫を受け取る妹尾の指先の感触に、ビビっと体に電流が走る。
――どうした、小宮山誠一郎! しっかりしろ!
「あの、課長」
ふうふうと呼吸を整える俺を気遣うように妹尾が声を掛けてきた。
「な、なんだ」
「名前、どうします?」
「な、名前?」
「ええ。ないと不便ですよね?」
胸に白色のもふもふを抱きながら妹尾が問う。たしかに彼の言うとおり、名前は必要だろう。だが、突然言われても、パッと浮かぶわけがない。
ホワイトチョコレートのような白い毛。アクアブルーのつぶらな目。クリーム色の三角耳。ちょっと短めの鍵しっぽ。愛らしい口。立派なひげ。
「えっと……そうだな」
どうせなら、かわいい名前がいいだろう、と顎に手を添えて思案する。
「係長で」
「は?」
「課長の下だから、係長はどうですか?」
「なんのジョークだ?」
最初のコメントを投稿しよう!