152人が本棚に入れています
本棚に追加
/241ページ
五. その村の秘密を探ってはいけない
岸谷セシカは伊久見燎の言葉を何度も思い返した。
「何が、俺はお前と伊比村を、必ず破滅させてやる！ よ！」
「あいつ一人で何ができるのよ！」
「伊比村を敵に回して勝てるわけがないだろ！ バッカじゃないの！ 大見得切ってさ！」
「私が亜衣を殺したんじゃない。勝手に自殺したのよ」
セシカはブツブツと何度も口の中で、「バカじゃないの！ ありえない！」と呟きながら道を歩いた。
いつものネットカフェまでもう少し。
ネカフェ生活もそろそろ脱却したいが、お金が底を尽きかけている。
だから今夜もそこに泊ることになる。
「今夜もここか…」
そのとき突然後ろから誰かに羽交い締めにされた。
「キャッ」
誰かに助けを求める暇もなく、あっという間に表通りから裏通りへと連れ込まれた。
そのまま小さな空き地まで無理連れて来られた。
周囲は高い塀に囲まれていて、さらに工場や倉庫などで、ひとけのない建物ばかり。
セシカは必死に抵抗した。
「ちょっと！ やめて！ 放して」
男はセシカを地面に倒そうと、力ずくで体を押した。
「ハァー、ハァー」
耳元に掛かる尋常じゃない荒さの男の鼻息。
「嫌！」
最初のコメントを投稿しよう！