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古くから湯治場として使われていた様で、木造の建屋はとても古い。
お風呂は男女別でどちらも露天風呂。
しかも母屋から離れて、細い木造の橋を渡った川の近くにある。
周囲は深い緑の山並みで囲われ、セシカは伊比村を思い出した。
珍しくない、懐かしくもない山の緑。
「早速入りましょうよ」
亜衣はセシカの手を取り、女風呂に引っ張った。
中に入るとまだ時間が早いからか、客の入りは少ない。
「♪~」
よほど楽しいのか、亜衣は鼻歌を歌っている。
セシカはゆっくり服を脱いだ。
「先に入っているわね」
裸になった亜衣は浴場へ。
その後ろをセシカが続いた。それは膝の裏にあるケロイドを見せない為だ。
半分屋根のある露天風呂。
洗い場には若い女性が一人。露天風呂には若い女性と中年の女性が一人ずつ浸かっている。
セシカは全員の配置を頭に入れて歩いた。
亜衣が洗い場でかけ湯を始めた。
その隣で浴槽から亜衣の死角に入るように、セシカは慎重に座った。
白い湯気がお湯から立ち上る。
浴槽から溢れたお湯が常に流れるところには硫黄の結晶がこびりついており、硫化水素の腐卵臭がわずかに漂っている。
亜衣は隣にきたセシカに聞いた。
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