猿を食す

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 沖野口は話がとても大きくなってきたので、慎重に進めるべきだろうと考えた。  燎はいまいち脅威を理解していない沖野口に、萱野についても説明した。 「もう一人、重要な証人がいます。萱野さんという悠木モナさんの恋人です。萱野さんは伊比村で脳みそを食べられる寸前に逃げ出して、こちらで匿いました。彼の体験談が公になれば伊比村も今まで通りでいられないはずです。しかしそれは彼にも大きな負担です。彼は衝撃的な体験によって精神障害を起こしていますから、今はまだ発表できません。病院に隔離している理由はそれだけでなく、生き証人である彼が伊比村に狙われないようにするためでもあります。それで彼の生存を一部のもの以外に隠しています。伊比村の人間は秘密を守るために事実を知る人間を暗殺します。それぐらい伊比村は危険なのです。あの村を放置することは大変危険です」  燎の熱弁に沖野口は心を動かされた。  だがまずは真偽の裏付けだ。 「萱野氏の話を聞けますか?」 「ええ。どうぞ。但し、伊比村の出来事を思い出すことによって精神が耐えられない危険があります。短時間でお願いします。もって10分ですね」  燎は病室で萱野と沖野口、篠原を会わせた。
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