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「萱野さん、あなたが伊比村で体験したことを正直に話して下さい」
萱野は固く口を閉じた。
主治医の燎から許可された時間はわずか10分だ。
口を開くまで大人しく待っていられない。
「あなたのような目に遭っている人が沢山います。これ以上被害を増やさないよう、協力して下さい」
「…」
萱野は口を閉じたまま、目も閉じた。
『やはり無理か?』
だがここで引き下がるわけにはいかない。
手持ちのカードは全て切る。
「悠木モナさんも同じ目に遭うところだったそうですよ」
「モナが!?」
萱野は目を開けた。
ショックを受けた萱野は、青ざめて冷や汗をかきだした。
体調を崩されては面談が打ち切りになってしまうと心配した沖野口は、「悠木モナさんは元気ですから、もう心配いりません」と急いで口添えすると、「良かった」と萱野は落ち着いた。
萱野はモナまでが危険な目にあったことを知り、気持ちを変えたようで話しだした。「分かりました。このままではもっと被害が広がる。僕の伊比村での体験が役に立つなら話します」
こうして沖野口と篠原は萱野から全ての話を聞いた。
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