猿を食す

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 この速さであそこにいるということは、悠木モナは亜衣に襲われたのだろう。 『悠木モナは三上亜衣に襲われて死亡。犯人の亜衣は自殺となった』  想像以上の結末となり、セシカは満足した。  目前で気落ちする燎。  セシカは無視してその場から立ち去ろうとした。 「待て! 折田伊那子!」  燎に呼びとめられてセシカは立ち止った。 「何故その名を?」 「お前、折田伊那子だろう。これは全てお前が招いたことだろう」 「フ…。私が? どこにそんな証拠があるというの?」  氷のように冷たく否定するセシカ。  開き直りとも捉えられる態度だ。 「俺が甘かった…」  燎は絞り出すようにうめいた。 「お前は俺の方に直接来ると思っていたんだ。まさか、まさか、亜衣がこんなことになるとは、全く予想していなかった」 「私の正体を知っていたと言うの?」 「ああ。知っていた。お前は伊比村の食人鬼だ」  もう警察には頼らない。  亜衣の仇をとり、伊比村の悪事を止め、犠牲者をこれ以上出させないためなら、自分の全てを捨ててもいい。  燎は命を賭けて戦う覚悟を決めた。  立ち上がるとセシカを睨み、指さし、力強く宣戦布告した。 「俺はお前と伊比村を、必ず破滅させてやる!」
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