たからもの

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内臓をわずらっていた、と隣のおばあちゃんが我が家の奥さんに涙ながらに話していたのは、固い雪がじゃぶじゃぶになって、ようやく解けて消えかけたとき。 春を待たずに、ゴロさんは逝った。 辺り一面の花が咲いた。シロツメクサ、タンポポ、カラスノエンドウ。 申し訳ないけど、すこしだけ掘り返す。たからものを、代わりに見つけるって約束だから。 奥さんが、重たいお腹をさすりながらゆっくり後ろをついてくる。 「あら、ハナ。そんなお人形、どこから見つけたの?」 「お!それ、俺が子供の頃になくしたレンジャー人形じゃないか」 旦那さんは僕のみつけた物を見て、目を丸くした。 「さては、あいつだな」 旦那さんがそう言って振り返った先には、今はもう主を失った小屋。 入り口には拙い手書きの「ゴロのいえ」。その右横には、土を掘り返したあと。 たからもの。 確かに一つ、受け取ったよ。
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