起こり

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 その刀は光を(まと)い、神話に語られるような、大きな(つるぎ)となり……振り下ろされる。  ――天を二つへ割り、振り下ろされた光の(つるぎ)は土蜘蛛を真っ二つにし、勢いそのままに大地をも穿(うが)つ――  幻視。遠い過去に起こった闘いか、または未来において起こる闘いを幻視していた。  ゆらりゆらりと蝋燭(ろうそく)の火が揺れるなか神鏡(しんきょう)の前に童は座り、澄んだ鈴の音と共に涼やかな詞を紡いぐ。  蝋燭(ろうそく)(あわ)()らぐ火が(にわ)かに大きくなり燃え盛る炎となる。ほぼ同時に左の蝋燭(ろうそく)が蒼炎に右の蝋燭(ろうそく)が黒炎へと変わった。しかし、童は異常な事態にも顔色一つ変えず、不気味な色――尋常(じんじょう)ならざる色で燃える蝋燭(ろうそく)をじっと見つめている。  (わらべ)は少し、思惑(おもいまど)嘆息(たんそく)した後に――かしわ手を打つ、その瞬間に燃え盛っていた蝋燭の火が消え、煙と共に場に似つかわしくない、(ほの)かな腐臭(ふしゅう)が漂う。     
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