起こり

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「乱が起こる」  幾人(いくにん)もが平伏している間で、御簾(みす)の横に(はべ)る男。歳古く(しわ)深いが、瞳に爛々(らんらん)と輝く()の光、聡明(そうめい)な顔をしながらも、男より重苦しい言葉が発せられる。  男の名は藤原忠平(ふじわらのただひら)位人臣(くらいじんしん)を極め、さらには摂政(せっしょう)(つと)める者である。  そんな重大な危機を言われても平伏してる者達はピクリとも動かず次の声を待つ。 「近い時に東国と西国の両方より、ほぼ同時期に起こる。詳しい話は陰陽寮(おんみょうりょう)の者より……各々(おのおの)奮起(ふんき)されよ」 「はっ」  平伏している者たちから一斉に鳴り響いた声により揺れる御簾(みす)。  御簾(みす)の奥の影は声を発することなく、するすると足音を立てずに奥へと戻っていく。  (しば)しの時が経ち、簡素な造りの間において朝服(ちょうふく)を着込んだ男が平伏している。 勢いよく間の(ふすま)が軽快な音を立て開かれ、入ってくるのは摂政である藤原忠平……その人であった。 「(おもて)をあげよ」     
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