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半身になりながら左足を出し、少し腰を落とす。刀は切っ先も刃も敵に向けず、胸元で両手を交差させ構える。
静かに、しかして確かに右足へと力を溜める。
「ふう……ふう……ッシ!」
満仲が地を蹴れば、地に穴が空く。
――ただ速く。
――ただ一直線に。
――ただ一点を貫く為に。
姿は霞と消え、煌めきを残し、瞬きの間に敵の――鬼の喉元を刺し貫く。
満仲は柄を右手に持ち、頸まで貫いた刃を左手で掴み……首を捻じ切る。
椿のように落ちる首。
「おおおおお!!」
赤い血を全身に浴びながら満仲は雄叫びを上げる。
ちゅんちゅんと雀の鳴き声とともに満仲は見慣れないモノや式盤が置いてある部屋で目を覚ます。
「ここは――」
「起きられましたか……師の賀茂忠行様の邸宅、その中で使わせていただいてる私の部屋ですよ、満仲殿」
晴明の声は聞こえども姿は見えず、きょろきょろと其処彼処を見渡しながら、満仲は徐々に体を起こす。
「いたた、やはり無理するもんじゃないな……何処にいる晴明」
「すでに陰陽寮で仕事中ですよ、今は式を通してそちらに声を飛ばしてます。あの時に急に倒れたから驚きましたよ」
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