シカク

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左青龍(させいりゅう)万兵(ばんぺい)を封ぜよ! 右白虎(うびゃっこ)不祥(ふしょう)を除けよ! 前朱雀(ぜんすざく)口舌(こうぜつ)を避けよ! 後玄武(ごげんぶ)万鬼(ばんき)を剋せよ! 四神封結界(ししんふうけっかい)急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)!」  言霊(ことだま)(つむ)がれ、瞬く間に蛍火(ほたるび)のように淡く光を放つ透明な壁が高く、そそり立ち、あっという間に黒衣の集団を取り囲む。  光により照らされた、大内裏(だいだいり)の闇の中から男が現れる。――立烏帽子(たてえぼし)を被り、白い狩衣(かりぬい)を着込む男。  眉目秀麗(びもくしゅうれい)――その一言に尽きる顔形の美しさ。青年よりも少年といって差し(さわ)りのない歳ほどであり、女と見間違う美しい黒髪を腰ほどまでに伸ばしていた。 「良くやった晴明(はるあきら)、いい腕前だ!」  野太い声を響かせ、一陣の風を乗せ、晴明(はるあきら)と呼ばれた少年の横を全力で駆けていく男。  その男、歳のほどが三十前……闘争心溢(とうそうしんあふ)れる闘犬の如く、獰猛(どうもう)な笑みを浮かべる。  姿は髪を馬の尾の様に後頭部で結い。鍛えられた鋼の様な左半身を大きく開けだし、脛巾(はばき)を着けず、(はかま)を膝上辺りまであげ、剛健な足をさらけ出し、走る度に脈動する筋肉。 「満仲(みつなか)殿、足場を作りますので結界の上から入ってください! 土よ高く、そそり立て急急如律令」     
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