オニ

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オニ

  「うおお! ぶった斬れろ!」  気合いとともに満仲(みつなか)は身動きの取れない蜘蛛(くも)の頭部へと、紫電(しでん)を纏った刃を(ほとばし)らせる。――静寂(せいじゃく)。その静寂を破るように蜘蛛は断末魔を上げ、白い血飛沫(ちしぶき)とともに竹のように半分に割れる。  一寸遅れてから、結界もが半分に斬れ割れる。  (はかな)く、粉雪のように舞い散る結界の残滓(ざんし)。  満仲(みつなか)は|一仕事を終え、大きく嘆息(たんそく)し、反対側でまだ動きのない黒衣へと向き直る。 「最後はお前だな……"鬼"よ」  晴明(はるあきら)が維持していた結界が壊れ行く最中、満仲(みつなか)はボロボロに刃こぼれした刀を最後の――棟梁(とうりょう)と呼ばれていた者へと突きつけ警戒する。  満仲の背後より、割れ崩れかけている蜘蛛から這い出る黒靄(くろもや)――静かに、ゆっくりと這いよる。  黒靄(くろもや)があと一寸で満仲へ触れるか触れないかのぎりぎり、一陣の風が吹く。 「完全に成ってない蜘蛛でも、斬っただけじゃ駄目だよ、まんじゅう殿」     
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