キョウの幕間

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キョウの幕間

    暗雲立ち込め、死の匂いが充満した戦さ場。  戦さ場の真っ只中に置いて。――円形状に何かを逃すまいと囲む、色とりどりの肌と額に角を持つ集団。  数に物を言わせ、何かを押し潰す訳でもなく……ただ囲むだけの異様な光景。  その円の中心には鎧は砕け、大粒の汗と血を流し、刀を構える者。――源満仲(みなもとのみつなか)その人が、ただ一人、敵と対峙していた。  敵は黒い肌を持ち、満仲よりも数段大きく、逞しい体つき……そして額には見事なまでの血管が浮き立つ一本角。その手には(くろがね)で作られたと思われる棒――金砕棒(かなさいぼう)が握られていた。 「くく――っははは!」  気が触れたのか……大笑いをする満仲。狂気的な笑みを浮かべている。 「楽しいぞ! これだ……追い詰められ、血が沸き立つ戦い! これを求めていた!」  上半身が大きく膨れるまで、息を吸い込み――吐き出す。  肩で息をしていたのが嘘のように整い。先程まで、荒ぶり、(たか)ぶっていた精神も落ち着き、狂気は(なり)を潜める。――神色自若(しんしょくじじゃく)。     
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