シカク

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シカク

 都に夜の(とばり)が落ちて久しく、大内裏(だいだいり)を警備する兵の気が緩み始めた頃。  月が雲隠れするのに合わせ、兵が数人づつ闇の中に消えてゆく、その瞬間だけを目撃すれば人は言うだろう、”神隠し”と……  先程まで大内裏(だいだいり)を警備していた無数の目と息遣いが消え、篝火(かがりび)がパチパチと粉を爆ぜ踊らせる独壇場。  ひらりと音もなく神隠しの如き(わざ)をやってのけた立役者、黒衣を一様に纏いしモノらが出てくる。  月明かりに照らされ徐々に異様な形貌(けいぼう)(あらわ)になりはじめる。枯れ枝のように細く足先まで届くほど長い両手のモノ、樹齢が長い木のように太く逞しくゴツゴツとした足のモノ、体が丸く遠くから見れば(まり)と見間違うほど丸いモノ。 「首尾は上々……兵は全て黄泉(よみ)の旅路」 「あとは(すめらぎ)も同じ旅路に」 「古き時代を壊し、主の創る時代を」 「我らが新皇(しんのう)の為に」  人が消え黒子(くろこ)のみが、ささめく舞台に清流のように透き通った声が響き渡る。     
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