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窓際にある月の灯りで照らされたベッドの上で、
甘い香りのする毛布に二人で包まって、真っ暗な天井を見つめる。
高くはないし、広くもない。
半分ほど開いた窓から吹き込んだ夜風で緩やかに揺れるカーテンが視界の隅に入る。
静かな時間が経過していく中で、
ふと不安になって彼女の右手を握ると、温かかった。
彼女も僕の手を包むように優しく力を入れた。
外から聞こえる猫の鳴き声、遠くから聞こえる電車の音が、子守唄のように、僕達の部屋へと入り込む。
彼女の呼吸する音が僕を安心させる。
こんな時間がずっと続いてくれたらいいのにと、いつもこんな時に思う。
彼女が毛布の中で身体を少しだけ僕に寄せて、ベッドが揺れた。
彼女のシャンプーの匂いがした。
壁にかかったアナログ時計に目をやると十二時を指して、音を立てずに秒針が流れている。
眠るのはまだ早いような、決して早くはないのにそんな気がしていた。
彼女が僕の首元に頭を埋める。
僕は握っていた手を離して彼女の頭の下へと手を回した。
「明日、髪、切ろうかな。」
彼女が耳元で静かに言った。
僕は彼女の頭の下にある手とは反対の手で彼女の髪の毛を触る。
ロングヘアーだった出会った当初の彼女を想像できないほどに短くなった髪の毛。
指を滑らかに通り抜けた。
「まだ、いいんじゃないかな。」
僕は彼女の表情を見れないけど、表情を想像しながら言った。
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