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遠くで、救急車とパトカーの音が聞こえた。
「事故かな。」
彼女は髪の毛の話題を忘れてその音に耳を傾ける。
僕も彼女の髪を触る事をやめて、毛布の中に手を収めた。
「事件かも。通り魔とか。」
何故か僕は彼女を怖がらせるような言い方をするが、彼女はそんなに怖がりではない。
「こわいね。」
やっぱり彼女はあまり怖がらなかったので
誤魔化すように彼女を抱き寄せた。
柔らかい体が触れる。
「ねえ、。苦しい。」
胸の中で埋まる彼女を思わず強く抱きしめすぎてしまい、力を緩める。
救急車とパトカーの音が近くで止んだ。
気がつけば、猫の声は聞こえなくなっている。
再び静かになった部屋の中。
彼女が鼻をすすった。
「寒い?」
「んーん、なんかむずむずしただけ。」
「そっか。」
僕は彼女の心を読みたい。
今なにを考えてどんな事を感じているか。
寒いか、暑いか、眠いか、眠くないか。
僕の知らない彼女はまだたくさんいるし、
まだ彼女の知らない僕もいる。
全てを共有したいと思っている。
このまま二人で夜に溶け込んで、毛布で一つになって。
僕は彼女の温もりを感じながら目を閉じた。
夢の中でも会えるかな、なんて期待しながら。
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