秘宝

4/4
前へ
/4ページ
次へ
 そして……、奈落の向こうに小さな光が現れた。光はリンダの姿になり、少しずつこちらに近づいて来た。彼女は両側に荷物をぶら下げた戦棍(メイス)を肩に担いでいた。上半身は白いキャミソール姿だ。ランプは戦棍(メイス)に吊り下げられ、ゆらゆらと揺れながら彼女を照らしている。通路の向こう側にたどり着いたリンダは肩から荷物を下し、ショウに大きく手を振った。 「お待たせ」  リンダは身一つで通路を渡って来て、ショウにささやいた。切れ切れの息の中でリンダは、何度も往復するのは時間がかかるので、自分の上着も使って人間一人分の重さの鉄球を一度に運んで来たと説明した。  そして、リンダが通路を何回か往復して鉄球をこちら側へ運び、二人の上着で包んで神像があった場所に固定した。さらにリンダも鉄球の上に座った状態でショウが通路を渡り、その後でリンダがそろそろと通路を渡った。こうして二人はオパールと共に奈落を越えることができた。最後の難関を突破したのだ。  二時間ほど後、二人はダンジョンの入り口にたどり着いていた。暗闇に慣れた二人の目には外界の光がとてもまぶしかった。周辺は森林地帯だった。三十分も歩けば近くの村にたどり着ける。村人にダンジョンを攻略したと告げたら大変な騒ぎになることだろう。 「でもよく戻ってきてくれたな。もしかして置いて行かれたのかと思ってひやひやしたぜ」ショウの言葉にリンダが微笑む。 「それも考えないではなかったけどね……。ダンジョンはまだいくつも残っているのよ。あんたとだったら他のダンジョンだって攻略できると思ったのよ」  真剣な表情に変わってショウを見つめる。 「よかったら、一緒に他のダンジョンも探検していかない?」 「望むところだ……けどな」  ショウは言葉の途中で視線をそらせた。 「何よ、何か不満でもあるの?」 「いや、村に着いたらすぐに君の服を手に入れないといけないと思って。上着で包み込んでいた時は目立たなかったけど、すごい……よね。このオパールよりずっと……」  パァン  高らかな音が放たれ、青空へ広がっていった。 「バカ言ってるんじゃないわよ。行くわよ」  ショウを張り飛ばしたリンダは村に向かう道を歩み出した。言葉とは裏腹にまんざらでもないと言った表情を浮かべながら。 終わり   
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加