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姫鳴ちゃんの恋の行く先がどこなのかはわからない。一週間後には絶望しているかもしれないし、未来永劫添い遂げるかもしれない。どうなったとしても、他人の思惑も思慮も関係ない彼女だけの恋を育んでほしい。
「キミが体を張ってくれたおかげだよ。逃げることも考えていなかったわけではないけれど、本当によくやってくれた。なにか、思うところでもあったのかい?」
「一生懸命な人は、応援したいだけですよ」
「そうだね。キミは、そういう人間だよね。そうでなければ、あの子と一緒にいることなんてできないよ。それはそうと、はい。ご所望のものだ」
手当てを終えた会長が、制服のポケットから可愛らしい正方形の包みを取り出し俺へと渡してきた。
「これは?」
「キミが昨日望んだものだろう。バレンタインデーの贈り物さ」
そう言えば、そんなことを昨日言ったような気がする。まさか本当に作ってきてくれるとは思わなかった。
走り回ったおかげで小腹も空いていたので、開けてもいいかと確認をしてみる。笑顔で首肯してくれたのを見てから、丁寧の包装を外していく。
しかし、可愛らしい包みの中には何も入っていなかった。箱をひっくり返しても何も出てこない上、細工がしてあるようにも見えない。
「ちょっと、何も――」
次の瞬間、頬に柔らかい熱が触れた。
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