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 前方に待ち受ける敵、後方からは追手。突破口はなく、打開策もない為、この場を無傷で乗り切るのは不可能でしかない。  背後にいる女の子が、心配そうな表情を浮かべながら俺の顔を覗き込んでくる。  くりくりとした大きな瞳、艶やかな髪、あどけない顔立ち。小動物のような愛らしさを持った下級生は、普段からぼさぼさの頭とよれよれの白衣姿で過ごす我が幼馴染みである槞彩江と同じ生き物とは思えなかった。  この子を俺は、前方にいる五人の男子生徒が塞ぐ扉の向こうへと連れて行かなければならない。  なぜこんな、姫を守る騎士隊長のようなことをしているのか。俺は記憶を、昨日の朝まで戻した。  ◇  朝、彩江が寝坊をしていたのでそのまま置いて学校へと登校をすると、まるでタイミングを計っていたかのように放送で呼び出しを受けた。聞き覚えのあるその声に肩を落としながら、教室よりも先に生徒会室へと向かう。 「おはよう、寄ちゃん」  生徒会室で俺のことを待っていたのは、生徒会長の全知叶(ぜんちかなえ)だった。腰まで伸びた長い髪を揺らし、その整った顔に胡散臭い作り笑いを張り付けている。     
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