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「もちろん。彼女が入学した時から、その容姿に惹かれた者たちがいたのだがな、この間のミスコンでの優勝でその熱に火がついてしまい、ファンクラブができたらしいのだよ。その連中も明日の告白の情報は握っている上、告白の相手というのが桜士岳(おうじがく)らしいのだ。邪魔をされるのは必須だから、なんとかしてほしいと頼まれた」 「桜士岳って、あの喧嘩無敗、近隣の学校の悪を全て束ねており、親は極道。その凶悪ぶりに教師はおろか警察も手をこまねいているという、ヤンキー漫画みたいな噂ばかり聞く、あの人ですか?」 「面白可笑しく広めている奴がいるからどこまで本当なのかもわからないけど、その男だよ。普通の生徒なら恐らくファンの連中も気にしないだろうけど、あの男ともなると、連中は本気で食い止めに来るだろうね」  取柄もない一般生徒で、人気とは縁のない人間なのでその話は現実感のないものだった。相手が相手であったとしても、告白一つ楽にできないとは難儀なものだと思う。  いわゆる人気なお姫様と大悪党の壮大な恋の物語と言ったところだろうか。場面で言うなら終盤の一番いいところになるだろう。  俺のやることに関しては理解をした。だが、そのお願いを了承した会長の思惑までは理解できなかった。  言ってしまえばどれだけ壮大なものであっても個人の色恋沙汰だ。苦労しようがなにしようが自分でどうにかするべきだ。     
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