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 特にこの人は、個人に関してはてんで興味のない人間だ。成果至上主義で、そのための犠牲も厭わない。その上冷徹で、無利益を嫌う。そしてそれを人に隠すのが上手い人間でもある。  個人的に仲のいい相手でもないのに、そんな面倒なことを引き受ける筈がない。これはきっと、これまでのことを考えてもなにかもっと大きな目的があって受けたようにしか思えなかった。  確認をしてみると、肩を竦めながら素直に答えてくれた。 「私の今回の目的はね、そのファンクラブだよ。彼らは写真部を名乗って部活を立ち上げている上に、部費で彼女の写真を撮る為の撮影機材の購入やオフ会の開催などやりたい放題なのだ」 「把握しているのなら、普通に廃部にできるんじゃないですか?」 「露骨ならそうできるのだがね。撮影は写真部の活動だと言われれば納得するしかないし、申し訳程度に風景を撮って公募に送ったりもしている。その上在籍人数もそこそこの為、部活動の規約に違反しているところは一つもないんだよ」 「それじゃあ、駄目なんですか」 「同じ目的を持った仲間となにかをすることに異論はない。罪さえ犯していなければファンクラブでもなんでもやればいい。だがな、部活動へ分配できる予算というのはピンキリだ。こちらとしては優秀な部活に予算を割り振りたい以上、功績も何も生まない部活は邪魔でしかないんだよ」     
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