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その問いに対して俺は今まで、科学部に必要なものを遠慮なく要求してきた。おかげでテレビやソファーまで完備された部室となっている。ただ思いつく中でこれ以上必要なものは思いつかない。
スマホを取り出し、彩江に聞こうと思ったところで、俺はそこに表示された日付が目に入った。たまには、この人が困惑するようなお願いをしてみよう。
「明日はバレンタインデーなので、本命が欲しいです」
「本命?」
「はい。会長から、愛のこもったものが欲しいですね」
流石に、拒否をしてくると思った。なんなら正気を疑われるとさえ思った。だけど会長は、ひとしきり笑った後、なんでもないように言った。
「いいよ。とびっきりの奴を用意してあげる」
◇
ということがあり、本日の放課後。待ち合わせをしていた下駄箱にて合流するや否や想定の五倍過激な妨害を受け、紆余曲折、右往左往した結果、なんとか屋上へと続く最後の階段の前まで到着した。
一旦手前の空き教室へと身を隠したのだが、息をついている暇はない。目的地がバレている以上、巻いてきた連中もいずれここへと来るだろう。
今のところ、彩江から借りてきた小型ドローンで偵察した限りは屋上への扉の前に五人の生徒がいるだけ。
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