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 ただ、その五人が大きな障害となっていた。事前の情報で聞いていたファンクラブの結成者にして最古参であるトップ5と呼ばれている連中だろう。今までは説得してみたり姫鳴ちゃんの愛らしさを武器に乗り越えてきたが、あの五人に関してはその手は通用しないと思われる。  手助けをしている俺のことも把握されている以上、逃げることも不可能で、ファンクラブの過激さを鑑みると最悪後日の報復さえ考えられる。  ここに至って、このお願いに俺のメリットはないような気がしてきた。これまでは、科学部の発足やその設備の充実など確かな目的があった。それに対して会長には恩も感じている。なので、お願いを聞くことは苦ではなかった。だけど今回に限っては毛色が違う。  相手は本気だ。傷つけることに躊躇はなく、その行動は姫鳴ちゃんへ抱く感情の度を越えているようにしか思えない。姫鳴ちゃんがこう言ったお願いを生徒会室に持っていくのも納得できる。  自分の理想を押し付けるタイプの嫌なファンではあるだろうが、彼らの正義は今そこにある。彼女が悪童に拐かされないように守るという大義名分を勝手に得ているのかもしれない。  そうした場合俺は敵だ。敵である俺に、彼らは容赦などしてはくれないだろう。  こんな状態の中のどこに、俺のメリットがあるだろうか。     
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