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 いや、ないのだ。姫鳴ちゃんを大人しくあいつらに差し出す以外、俺に助かる道はなく、俺にとってはそれが一番のメリットだ。あいつらの思うようにすれば、その後の報復の心配もない。  お願いの失敗により科学部を失うだろうが、彩江が発明を行うのは別にこの場所でなくてもいい。色々な研究所から誘いを受けているのでそこですればいいだけのことだ。  家が隣である以上、会えなくなることもない。  俺が平和な学校生活を送るためには、このお願いを破棄する以外にはない。 「あの、大丈夫ですか?」  その声は、目の前にいる姫鳴ちゃんからだった。心配そうな表情を浮かべながら、俺のことを見つめてくる。  今回の話を彩江にした際に渡された発明品の一つに、『絶対特権スピーカー』という拡声器の形をしたものがあった。  対象一人に一度だけ自分の命令を聞かせることのできるという代物らしい。ここまで追手の数が大人数だったので一人にしか使えないこれの出番はなかったが、ここが使いどころだろう。  これで彼女に一言『諦めろ』といえば、万事解決する。  ただ、罪悪感がないかと言えば嘘になる。 「一つだけ、聞いてもいい」  なんでもよかった。彼女の口から、一言でもいいから、自分のことを正当化できる何かが欲しかった。     
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