チョコの女神

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 チョコの女神を名乗る女は、右手に金色、左手に銀色の小さな四角い物体を持ち、そう言った。  彼女の言い分を肯定するなら、四角い物体はおそらくチョコなのだろう。  まず「チョコの女神ってなんだ」とか、「俺のチョコどこいった」とか、「それ金や銀ならすでにチョコじゃなくないか」とか、怒涛のツッコミが頭を埋め尽くしたが、ちょっと落ち着こう。はい深呼吸。  俺は普通の可愛い女の子からチョコをもらいたいのであって、こんな頭のおかしな女神(仮)からもらいたいのではない。  というか面倒くさそうな匂いがプンプンするので、早急にお帰り願いたい。  そこまで考えて、俺はハッとあることを思い出した。  昔、こういう童話を読んだことがあることを。  それは『金の斧』という童話だ。  童話では、木こりの男が川に斧を落とすと女神が現れ、落としたのは金の斧か銀の斧かを訊いてきて、男はどちらも否定する。  女神が最後に普通の斧を示すと、男はそれが自分の物だと答えたので、女神は正直な言動に感心して三本ともの斧を与えた。  一方、別の木こりの男が同じ展開になり、金の斧が自分の物だと答えると、女神は呆れて何も与えず姿を消した。  お分かりいただけただろうか。  つまり、面倒な展開を避けるには、こうだ。
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