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「金のチョコです」
「そう、正直に普通と答えるなんて感し……んん? 今なんて言ったかしら?」
「金のチョコです。銀でもいいです。とにかく普通じゃないやつです」
「なによ、その投げやりな回答は! ……というか、あなたセオリー知っててわざとそう答えたわね!?」
「いやー、面倒くさそうなので、手っ取り早くお帰り願おうかと……」
「なぁんですってぇ!」
アドレナリンMAXの甲高い声がキンキンと鼓膜に響く。
女神はハッと我に返ると、咳払いをして平静な顔を取り繕った。
取り繕ったとわかる時点で全然取り繕えていないことに、この女神は気付いていないのだろう。
「……コホン。まぁいいわ。偽りを答えた者のチョコは、まとめて没収するのがルールだから、これはもらっていくわね」
「どうぞどうぞ」
これもセオリー通りだが、俺が失う物は、木こりにとっての生活必需品である斧と違い、スーパーのお得用チョコである。
この程度なら懐が痛んだうちに入らないので安心だ。
「……ちょっとは悔しがったり残念がったりしなさいよ」
「はぁ」
素直にチョコの袋を差し出した俺を見て、女神は何故か不満気な顔をした。
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