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女神の反応があまりに顕著なので、だんだん面白くなってきた内心は隠し、俺は仕方ない風を装って女神の希望通りの台詞を吐いてみた。
「くやしいですーざんねんですー」
「あなたねぇ、棒読みにしたって、もうちょっとやる気出しなさいよ!」
「どうして怒るんですか? 言う通りにしたのに」
さも意味が分からないというように首を傾げれば、女神はジト目になって俺を見た。
俺の腹筋は崩壊寸前である。
「……なるほど。あなた、『うんとかすんとか言え』って言われたら、本当にウンとかスンとか言うタイプね?」
「おぉ、さすがは女神様。心が読めるとは」
「誰でもわかるわよっ、馬鹿にしてるの!?」
叫び疲れたのか、ぜぇはぁと息を吐く女神が鬼のような形相で睨んでくる。
なんだろうこの面倒くささ、逆に癖になりそうだ。
「……もういいわ。とにかく、これは没収します。ではわたしはこれで、」
「えっ、もう帰っちゃうんですか?」
「な、なによ。寂しいとでも言う気?」
「そうですね、正直に言えば寂しいです」
「……ふん、今さらそんなこと言ったって遅……」
「遊び甲斐のある玩具をなくす心境というか」
「あんたってホントそういうやつよね!!」
「というのは冗談ですが」
「……まだあるの」
呆れ果てた、というような女神の眼差しが、少しの間とともに俺に突き刺さる。
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