夫婦円満の秘訣

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大輔は久美子の言葉に反論することなく、開いていた口を閉じ俯いた。 後ろ手に手錠で繋がれた久美子は大輔の顔を覗き込むように屈み、狂気に満ちた瞳で大輔を見る。 口元は歪み、その口から紡がれる言葉は信じられない出来事だった。 「…私が気づいてないと思ってたの?貴方に近づく女は全員許さない…。だから、殺したのよ。貴方と腕を組んで歩いていたこの女も、貴方に電車で身体を擦り寄せていた淫乱女子高生も、貴方が行ったバーで色目を使ったホステスも!!でも、一番許せなかったのは私を裏切った貴方!!だから、貴方に近づく女を殺して食わせてやったわ!!美味しかったでしょ!!」 捜索の手が止まって青ざめた刑事達の前で久美子が大声で笑いだした。 何を捜索していたのか、鍋の中をお玉で掻き混ぜていた刑事がお玉から手を離した。 ホワイトシチューの中で大きめに切られた肉が鍋の中で踊っていた。 佐藤久美子は狂っている。 この部屋にいた全員がそう思った。 久美子の言葉に固まったまま動かない大輔に小柄な刑事は大輔の腕を取り部屋から連れ出そうとする。 これ以上ここで事件の真相を聞かせるのは拙いと思ったのだろう。 しかも、自分が人肉を食べさせられていたと聞かされれば精神的な苦痛は計り知れない。 .
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