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暫く、どちらからも言葉が発せられる事なく無言の時間が過ぎていく。
大輔が大きく唾を飲み込み、久美子へと顔を向け口を開く。
その瞬間。
大きな音と共に玄関のドアが開け広げられ、数人の男が室内に雪崩込んできた。
「佐藤久美子!!殺人容疑で逮捕する!!」
静寂を打ち破る声と共に、男達は黒い手帳を掲げ久美子を取り囲んだ。
状況についていけない大輔は驚きで思わず立ち上がるが、直ぐに刑事の一人の手が肩に乗り浮いた腰を椅子に沈めた。
大輔の目の前で久美子に手錠がかかる。刑事達が慌ただしく室内の捜索を始めるのを大輔は一人取り残された思考で夢の中の出来事のように見ていた。
「…佐藤大輔さん?怪我はないですか?ちょっとお話を伺う事になりますが、よろしいですか?」
ぼんやりと周りを見ていた大輔の顔を刑事が覗き込む。整った顔立ちが印象に残る小柄な刑事だ。
一度大輔は久美子へと視線を向けた後、こくりっと頷いた。
捜索が続く中、刑事が大輔が久美子の為に、と買った業務用の冷凍庫を開いた。
中に入っていた食材の置き方が悪かったのか、開いた扉から食材が転げ落ちる。
刑事が慌てて拾おうとしゃがみ込んで、小さな悲鳴と共に尻もちをついた。
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